2015年9月17日、「カンブリア宮殿」で放送されたのは、「とくし丸」。なかなか興味深い内容だった。
実は、都会でも、買い物難民が存在する
事例
新宿在住、92歳、男性、一人暮らし
足が不自由で、近くにコンビニやスーパーはあるものの、50メートル先のスーパーでさえ、行くことができない。
食事は宅配弁当だけだった。
移動スーパーの「とくし丸」が近くにくることによって、買い物できるようになった。
とくし丸の仕組み
- 移動販売を行いたいスーパーが、とくし丸の運営会社に導入依頼
- とくし丸の運営会社は、移動スーパーを経営したい人材を募集
- とくし丸の運営会社は、移動スーパーを経営したい人材に研修をして、個人事業主として独立開業できるように支援
- スーパーは、個人事業主に対して商品の販売依頼
※スーパーの一部でなく、個人事業主が販売するところが今までの移動スーパーと違う。
とくし丸のよいところ(お客様編)
玄関先での販売OK。外にも出られない場合は、ピックアップして持っていく。
要望のあった家に、週2回、家の前で販売
広場で人を集めるのではなく、玄関先まで来てくれるので、足の悪い高齢者には便利
ほかに客がいないので、つきっきりで接客してくれる
お客さんの好物も、ちゃんと持ってきてくれる
1日35件から40件をまわり、1軒1軒まわることで、ひとりひとりの客と深い信頼関係ができる。
個人事業主も、お客さんに喜んでもらえるので、やりがいがある。
とくし丸のよいところ(個人事業主編)
個人事業主が開業する前に、とくし丸の本部とスーパーで、綿密な売り上げがあがるルートを作成。黒字は期待できる。
午後5時には、スーパーに戻ってくる決まり。これは、販売しなかった商品を返却するため。その商品はスーパーで販売するので、個人事業主は、売れ残りを心配する必要がない。
1日6万円売れば、十分採算がとれる。
個人事業主は誰でも開業できるわけではなく、地元出身の人が開業できる。これでさらにお客様と深い信頼関係が築ける
とくし丸のよいところ(スーパー編)
あらたに車を買ったり、人を雇う必要がない。手軽に導入できる。
買い物難民の支援は、スーパーの1つの使命。でも、大概、大赤字
とくし丸はみんなが独立営業者でやっているので、スーパーもリスクがない
それこそ、売り手良し 買い手良し 地域良しの三方良し
とくし丸の軽トラック
音楽は、オリジナルで、プロのミュージシャンに作ってもらった。
歌は、プロが歌っている
軽トラのデザインは、海外で賞をとっているデザイナーに頼んだ。おばあちゃんたちが楽しい気分になるようにデザインのリクエストをした。
選んで見て触って買う、基本的な行為が非常に大事
「おばあちゃんのセレクトショップ」と呼んでいる
お客の99%はおばあちゃん
とくし丸には、冷蔵庫もついているのでおさしみなどもある。カタログで見たのでは分からない
最初は500~600点しかなかったが、今は倍以上に増えている。あれが欲しい、これが欲しいという要望でどんどん増えてくる。
とくし丸社長、住友達也氏の経歴
1957年、徳島・阿波市生まれ
23歳で雑誌を創刊
4畳半の下宿で雑誌を創刊する。それが、徳島タウン情報誌「あわわ」
月4万部を発行。徳島では誰でも知る雑誌に育て上げる。
とくし丸を思いついたのは、50代半ばになってから。
母親のある一言が、きっかけだった。「車に乗れない近所のおばあちゃんたちがたくさんいる。買い物に行くのが大変だ」と言い出した。「あ、そんな事態になっているのか」と思ったのがきっかけ。
2012年、とくし丸創業
みずから商品を売り歩き、独自のモデルを築き上げた。
過疎地でも黒字。秘密は?
全国の自治体は、買い物難民対策に補助金を出している。補助金にたよる移動スーパーは少なくない。
とくし丸は、営業する車のほとんどは、黒字。黒字であるのは、開業前にある。
担当者は販売エリアをしらみつぶしに回り、家族構成や買い物状況を調べ、買い物難民を探し出す。
10数軒しかとれてない、1コースになってないと、とくし丸社長は「まだ3倍必要。調査が不十分だ」とダメ出し。
社長は、全国で開業するエリアがあるたびに、自分の足で歩いて地域を回り、一緒に客の開拓を行っている。
地道な聞き込みを通じて、本当に買い物に困っている住民を探し出す。それらの家を線でつなぐことで、確実に収益をあげられるコースを作り上げる。
訪問して話すから、初めて分かる情報がある。
チラシとか広告だけでは、そういう情報は得られない。
現場にしか答えはない。
社長の話(調査)
新規エリアを作るときに歩く。これは、「需要調査」と呼んでいる。
たぶん徳島の、どの政治家よりも一番歩いている。
4年間歩き続けている。
時間があれば歩く。
一軒づつ歩くと、「まさか住んでないよね」という所も「もしかしたら」とトントンとするが、中から高齢者の人が這いずるように出てくる場面に何度も遭遇した。
こんな所でひっそりと住んでいる、日本の社会は、どこか狂っている
とくし丸が成功した理由は、歩いていること。
行政などが最も苦手とするところ。
いろんな暮らしが見れる
ビジネスは現場にしか工夫や答えが見つけられない
机上論ではない「こういうことが必要なのか」「こういう生活があるのか」から「こういうものがいる」ということを次々と思いだす
やっぱり現場に行かないと分からない
お客が金を払うことだと思う
社長の話(補助金)
少なくとも我々の会社で補助金をもらうつもりはない
ビジネスが成立することは「あなたの存在が必要」ということ
補助金をもらいたいと思った瞬間ビジネスとしては負けのような気がする
社長の経験
建設費1千億円の国が決めた吉野川可動堰(ぜき)の建設計画があり、地元から反対運動が巻き起こる。住友達也氏はリーダー的存在としてかかわる
2001年住民投票により、計画を中止にした。この経験をとおして、確信にたどり着いた。
地域のことは地域で決める。
外から手を突っ込まれて混ぜられるのでなく、他人が決めるのでなく、そこの住民、リスクを負う人が自分たちで決めるべき。
地元住民が地域の問題を解決する
地元で事業を続けていくためのルール
とくし丸”地元”ルール1
個人事業主に地元出身者を採用
同じ地元だから、深い信頼関係を築ける
地元目線でしか、ありえないようなルールもある
とくし丸”地元”ルール2
地元商店の半径300メートルでは営業禁止
「地元商店の脅威にはなりたくない。できるだけ共存したい」
とくし丸”地元”ルール3
価格に一律10円上乗せ。
当初とくし丸がどうしても黒字にできない中、利益を確保するために考えた苦肉の策。
「みんながお互い様だと思う。結果として利益が残らないと、とくし丸を続けられないから」
すべては地域が自立して問題解決して、自分たちで生きていくための工夫
地域自立の仕組み
300メートル圏内でやらないというのは、地域の自立を考えると当然のこと。
「もしその個人商店を僕の母が経営しているとすると、そこに売りにいけます?嫌じゃないですか。今まで地域を支えてきた店の脅威にはなりたくない」
「東京がダメになると全国もダメになる、ということではなく、地域に中心があって、そこの資金そこの人材、困ったおばあちゃんをサポートする完結した仕組みをいかに広げていくか」
大手メーカーが続々とくし丸に頼る理由
「のどから手が出るほど欲しい情報がすごく集まる」
依頼する理由は、買い物に来られない人が、とくし丸で買っている、今までターゲットとしてアプローチできなかったところにできる
大手食品メーカーから次々と寄せられている。コーヒーやお菓子もやったドリンクもやった
80歳前後のマーケティング手法は存在しない
食品メーカーが喉から手が出るほど欲しい情報がすごく集まる
某メーカーのヨーグルト
「こぼさず食べやすい」ので、とくし丸を利用している人にはむいている
試食サンプル配布を依頼、反応を知りたい
サンプルヨーグルト配布から1週間、とくし丸から多くの感想がきた
とくし丸の役割
とくし丸専用ATMを開発中。1万円札だけが引き出せる機能に超特化したATM。買い物に困る人はお金を下ろすのも困る
「そもそも80歳前後のお年寄りのマーケティングのチャンネルが存在しない。とくし丸は、簡単に週に2回顔を合わせて話ができる。週に2回会う仕組みが半年、1年と続くと、実の息子とか娘より、とくし丸の方が会う機会、話をする時間が長くなる。そこで、人間関係、信頼関係が構築できて、本当のヒューマンネットワークができる。これが、どんどん広がっていくと、また新しいインフラになる、新しいビジネスができる、というところを目指している。」
「これから超高齢化社会になる。行政の限られた予算と人員では、高齢者のサポートはできない。ぜひ行政に「とくし丸」を使ってほしい。有効な役割を果たせる立場になれる。本当に血の通った息遣いを感じる、人と人とのネットワークが、すごく重要になってくる。」
「最後は、人と人との関係が、一番、人の存在を左右する、生きる力になる。
社長の信念
「どう利益を得たかによって、気持ち良さが違う。人をだまして得たお金と「ありがとう」ともらったお金は明らかに価値が違う」
これはぜひ動画をご覧ください。
カンブリア宮殿は、いろんなアイデアの人が出演されていますが、今回は、なかなかおもしろいでした。限界集落でドローンを使って荷物を運ぼうと考えている起業家がいたように思いますが、あまりハイテクすぎて、ついていけない人もいると思うので、とくし丸はこじんまりとした感じで、いいですね。
ネットで調べてみると、いろいろありました。
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移動スーパーにしても、まずは集客できるかどうかが重要だと思います。
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